こころの様相はうつろい、それは御しがたいものである。漱石は、そこのとを小説の中で繰り返し描いた。
その結果、ひとは、じぶんのこころに振り回されてしまう。
漱石の小説をひと通り読んだけれど、それに対する救いについて触れいない、というわけではない。
それは刹那(せつな)だ。うる覚えだけれど「虞美人草」には、「絵を見るときの刹那により救われる」といったような会話があったようにおもう。「草枕」では、主人公は、眼に入るものすべてを画や詩で見ようとする。
ここまで書くと、どうしても、昨年ヒットした「この世界の片隅に」について触れなければならなくなってしまう。
主人公のすずは、おっとりした、すなおな性格だ。のん(能年玲奈)の声もよく、とても感じがよい。
それはともあれ、戦争という御しがたい出来事は、ひとびとのこころを不自由にしていく。そのとき、すずの救いは、大好きだったスケッチを描くことだった。描いているという刹那に救われていた。
ともすると刹那的というと、わるいイメージがあるかもしれないけれど、けっこう重要なポイントだとおもうんだなぁ。