いちじき司馬遼太郎を夢中になって読んだ。
司馬遼太郎の小説は、司馬史観と呼ばれることがある。
休日を利用して「啓蒙主義」( ロイ・ポーター)を読んだ。
用があって図書館に行き、たまたま手にとり、ついでに借りてきた。
むつかしそうなタイトルだが厚くもなく、読みやすい。
そのなかの「誰が啓蒙主義か」は、とくに、おもしろく読んだ。
「啓蒙主義は誰か」という命題について、極めて重要な人物をあげて、「誰それの実績がどうで、その影響を受けた誰それがこうで」的な方法がある、
がしかし、本書ではこのアプローチには否定的だ。抜粋してみよう。
「そうではなく、近年の社会史家に従えば、この運動は、あまり名前の知られていない思想家や書き手、そして読み手、さらに人のつながりによって始動し、支えられ、波及する。もっと幅広い発酵現象としてみなければならない」(65ページ)
「啓蒙主義という氷山の10分の9は表面下に隠れており、そのことを無視する歴史家はたへんな違いをおかす危険があることがだんだん明らかになってきている」(P68)
司馬遼太郎の小説は、たとえば織田信長、たとえば坂本龍馬に光があてられていて、本書にならえば、残念ながら、英雄のストーリィになってしまっている。
無名の人という点だけに焦点をあてるのなら、むしろ島崎藤村の「夜明け前」、あるいはトルストイの「戦争と平和」といった小説の味わいは深いのではないか。