南青山に事務所を借りていたことがある。
最寄り駅は、地下鉄「表参道」駅だ。
「表参道」には千代田線と、銀座線・半蔵門線が交わっている。なので、多くのほかの駅と比べ、出口が分かりにくいとおもう。
B4は、三菱東京UFJ銀行(当時は三和銀行)に駆け上がる出入り口である。事務所はB4を出て、青山通りより2本裏手の路地に面していた。出口から7、8分くらいだったろうか。
骨董通りを基準に説明すると、骨董通りに面した小原流会館を左に折れ、やはり7、8分歩いた場所である。
歩くのが嫌いではないので、通勤の際には、朝はJR原宿駅から表参道沿いに歩き、帰りは宮益坂を下りてJR渋谷駅を利用したりしていた。
「オウム事件」が、世間を騒がせていた。
オウムの東京支部は青山から宮益坂を下り、途中、左に折れた路地のビルの中にあった。ビルの前では、白い上下の作務衣のような服を着た、いわゆるオウムガールが2、3人、踊っていたりした。
村井刺殺事件は、そのビルの出入り口の出来事だった。夜に差しかかる時間だった。そのとき僕は事務所にいた。テレビに映し出されるその様子と、表参道に鳴り響き、走り去る救急車の音が重なり合った。
そういう経験も影響しているのだろうか。センセーショナルな事件として思い浮かぶのが、まずはオウム事件なのである。あとはライブドア事件、かな。
ライブドア事件については、ホリエモンや、経理面を仕切っていたとされる同社の宮内氏、監査人らが著書を出しているし、ジャーナリストの大鹿靖明氏による優れた著作もあり、僕なりに、その輪郭をつかむことができる。
それに比べ、オウム事件というのは、事件当事者たちの発言をまとめて読むことはできない。オウムが発行していた書籍も図書館に置かれていないでしょう。大鹿氏がライブドア事件でまとめたような、優れたノンフィクションを読んだ記憶もない。唯一思いつくのは村上春樹の「約束された場所」だ。さいきんインタビューについての方法論に悩んでいるし。同書を再読してみようと思うんだ。