漱石は、『世界的青年』(第一巻第一号 / 明治三十九年九月一日)に、『余が一家の読書法』という一文を寄せている。本の読み方について、2つのポイントが書かれている。

 ひとつめ。

本の内容にこだわるより、むしろ、本から受ける暗示こそ大切である。本文の言葉を借りれば「内容以外に何等の新思想や新感想を胎出すべし」ということになる。それは、たとえ本を読了しなくとも、暗示を受けたことがらを、まとめてみると良い。単なる多読は、バカ者である!

 ふたつめ。

ある本とある本の、ばくぜんとして見逃しがちな共通点は、看破すべきである。ただし、意識的に関係を見出そうとすると、形式的・機械的になり、読書が面白くなくなるし、自分の考えに流されがちでもある。「箱庭的」になる。