ホリエモンの『これからを稼ごう』の中で、本書は、トークンエコノミーの参考書として紹介されている。そして、両者とも、これからは好きなことをやっていくことを、すすめている。
ホリエモンは、とても鋭い人だとおもう。しかし、おうおうにして、ことばが足らない。だから「お金ですべて買える」などと、誤解を、まねいたりもする。
「好きなことを、やるんだよ」的な発言も、ことば足らずだ。本書での筆者の文章は、そのへんの傍証ともなる、とおもう。
本書の主題は「価値主義」についてだろう。以下は、本書をまとめたものとなる。
従来の価値は財務諸表に表れる。それに対し、財務諸表に表れない価値もある。それは、好きだったり、共感したり、信頼したりする内面的な価値である。またボランティアといった社会全体を維持するための価値もある。
トークンエコノミーというのは、後者のふたつと相性がいいらしい。財務諸表的な価値というのは、売上や利益に表れて初めて価値が認識される。それに対し、たとえば、好きという気持ちは、じゅうらい具象化がむつかしかった。しかしトークンなら、発行者がトークンと、好きを、ひもづけされるように設計することで、これが可能になる。
トークンにより、好きな気持ちが具象化され、評価され、流通させるようになる。これが「好きなことをやろう」的なことに説得力を持たせる理由のひとつ。そして、これは私感になるが、だれもがシンドイと感じることは、やがてAI化されてゆく。まだ、そうなっていないのは、AIの技術的な進展が待たれる点もあるとおもうが、人件費の方がAI導入より安いという、経営者の合理的判断もあるのではないか。この2点がクリアになれば、やはり「好きなことを、やった者勝ち」なのである。
Fintech(フィンテック)はバズワードかもしれない。定義があいまいなまま拡散している。本書では、Fintechを、あえて1.0と2.0で区別している。
1.0は、従来の文脈で語られる。既存の金融の延長上にあり、マスコミや金融機関がつかうFintechは、ほぼ、こちらを指している。
2.0は、近代につくられた資本主義というフレームワークではなく、ゼロベースから再構築されるものだ。ブロックチェーンが応用される仮想通貨やトークンは、こちらに該当する。ちなみに本書のタイトル『お金2.0』は、こちらの Fintech2.0に由来していて、本書は、こちらのパラダイム・シフトを中心に扱われている。個人的には、やや理解しにくい点もあるが、頭の中の整理に一助を与えてくれる良書だとおもう。