言うまでもなく、小説はフィクションだ。
けれど、時代小説や歴史小説は、ついつい実際にあったことのように読んでしまう。
池波正太郎が描く鬼平でさえ(実際に存在していたけれど)実像だと思ってしまうくらいだ。
司馬遼太郎の歴史小説となると、それが歴史だとさえ思ってしまう。
いわゆる司馬史観である。
歴史家の磯田道史さんは、司馬作品に対し、小説の読了をきっかけに、その時代について調べてみたり、司馬さんの考えの経路を意識しながら読みすすめる方法をすすめている。
司馬さんの考えを知るならエッセイを読む方がスマートだ。
「この国のかたち」は名著でしょう。
司馬さんの明治維新の視点を知るのなら「明治という国家」がおすすめである。
本書が、明治維新の立役者を中心に語られているのに対し、外人が描く明治維新は新鮮な視座が感じられる。
E・H・ノーマンの「日本における近代国家の成立」は一読に値する。
幕末と同時期にクリミア戦争が起こり、ロシア、フランス、イギリスは日本に本格的に介入する余裕がなかった(清国止まり)。そのおかげで日本は維新への時間的余裕ができた点、
ヨーロッパが段階を踏んで資本主義になっていったのに対し、日本は過程を飛ばし、当時のヨーロッパのそれを急場しのぎに取り入れた点、
フランス革命はブルジョワ(市民)が為政者を追いやったのに対し、明治維新の場合、藩の下級武士が中心となり、三井家など大商人の資金援助を得て成し遂げられた点、
市民から選ばれた議会主導ではなく、行政主導で、強権と補助により明治がカタチ作られた点、
私感としては、後者2点の影響が現在まで引き継がれていると思っている。ゆえに根強いよね。