オッケー、媒体の値段からアプローチしてみようか。
印刷とウェッブ系を比較してみる。
当時、パンフレットの総製作費は数百万した。リクルートが「五百万円で効果がなかったらお金をお返しする」といった営業をしていた記憶もある。
媒体費なら、雑誌が1ページ数十万円、全国紙(新聞)なら数千万円となる。
もっとも数千万円というのは言い値であって、実際は、相対(あいたい)取引となっている。
政府の出稿は言い値らしい。なので政府広告は新聞社にとっても、広告代理店にとっても、おいしい。
そもそも、政府が税金を使って、自分の主張をするのは、なんだかヘンだけれど、ま、いいや、話がそれてしまう。
印刷系はそもそも総製作費、媒体費が高いので、そこに関わるスタッフ、たとえばデザイナーやコピーライターは、それなりの報酬だった、と思う。
一方、ウェッブサイトは、どうだろう。総製作費は数十万だ。広告主によっては百万以上のケースもありそうだけれど。
総製作費、媒体費が印刷に比べて1/10とすると、そのおすそ分けをもらうクリエイターも1/10という理屈がなり立ちそうだ。
たとえば、印刷がまだ元気だったころ、パンフレットは1ページあたり、コピーライティング料は2万から3万だった。
パンフレットは「折り」の関係上、4ページ、8ページ、16ページ、24ページ..となっていく。パンフレット1冊、8ページとして20万ほどになった。
ウェブのライティング料は、その1/10と仮定して、2万となる。
ちかごろウェッブライターという職種をみかける。ツイッターを見てみると「1か月、いくら稼ぎました!」的な威勢の良いツイートをよく見かける。自分の仮説からすると「ほんとかなぁ」と思ったりもする。残念ながら、ウェッブライターの知り合いもいないし、もしいたとしても、なかなか値段についての事実など聞けない可能性が高いわな。
この話には、もうひとつ別の視点がある。
AIからのアプローチだ。
汎用型のOpenAIを試している。そのモデルGTP3は、汎用型が示す通り、文章の要約、キャッチフレーズ、ネーミング、取材の骨子作成などなど幅広い対応となっている。
当初、料金が気になるので、恐る恐る試していた。けれど、思ったより値段がかからない。
文章の要約、キャッチフレーズは日本円で、数円から数十円で生成される。
精度はイマイチだが、現在のGTP3から来年のGTP4(第4世代)になり精度が上がり、みんなが使うようになってくると、ライティングは現在のウェッブライターの(推定)報酬の1/1000だって、ありえなくもない。印刷がまだ元気だった頃のライティング料の、なんと1万分の1となってしまう。
要は、ライターという代筆業は成り立たなくなり、本人がAIを利用しながらライティングしていくようになると思うんだ。
これはなにも将来のライティングだけではなく、僕の周りの実例を上げることができる。
若い人は知らないし、信じられないかも知れないけれど、かつて印刷の文字を一つひとつ拾う、写植屋さんという職業があった。1960年代の東京オリンピックのころは、「金の卵」さえ言えわれていたそうだ。
しかしアップル社がマッキントッシュ(コンピュータ)を発売し、それに応じてアドビ社がデザイン用のアプリケーションを出し、印刷でも使えるポストスクリプトも出た。
当初、写植屋さんは「こんな文字使えないし、文字の詰めや行間も見にくい」と言っていて、そう言われると「そうだなぁ」などと思ってもいた。
けれど、だんだん気にならなくなっていき、数年後、ワープロあるいはパソコンでライターが打った文字をデザイナーが文字を整えるようになり、写植屋さんは成り立たなくなってしまった。
ほかにも実例はあるけれど、ここまでにして、要は「職種はなくなっていくこともあるよ」と言いたいわけ。