いぜんのようにブームとまで言えないまでも、村上春樹の新作「騎士団殺し」が売れているようだ。
作者は、漱石の「草枕」に啓発されて書いたと言っている。
漱石の小説の登場人物は不自然である。「こころ」のように、じぶんのあやまちを、いつまでも持ちつづけている人はいないし(気持ちの激しさは、時間とともに、やわらいでゆく)、「草枕」のように、すべての出来事を美的にとらえようとする人もいない。だいいち、ネコは、しゃべらんだろ。
ま、しかし漱石先生は、とうぜん、そのことは了解ずみであって。反対に「ありのままを書けば真実に迫る」自然主義文学を批判している。いかにしてフィクション(架空)をうまく描けるかが、腕のみせどころというわけだ。
こうみえても村上春樹の小説は、ほとんど読んでいる。そろそろ「騎士団殺し」を読もうかねぇ。