取材は、かなりタフなしごとである。
取材前にはテーマにそったノートをつくる。そのために、可能なかぎりの関連図書を読んだりする。
そのうえで取材をして、うまくいくとはかぎらない。おおよそ、反省するばかりだ。読者のかわりに取材者が恥をかいていると言えなくもない。
ま、それは、さておき、そのあとにはテープ起こしという忍耐が強いられる作業が待っている。
テープ起こしには、ふたつの可能性があるかもしれない。
ひとつは機械学習によるテープ起こしの自動化だ。
それには自前のパソコンではムリ、と言ってよい。
マイクロソフト、アマゾン、グーグルといったクラウド上のリソースをつかわざるを得ない。
じっさいに、グーグルのGCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)を試用してみていた。
GCPには1年間、あるいは300ドル分の、リソースの無料利用がクレジットされている。
300ドル分のクレジットは、目的以前の、理解するための利用という段階で使いはたしてしまった。期待より早かった。
というわけで、音声からの文字への自動化の確認はできていない。
ただし、この経緯から察すると、文字起こしの自動化は想像以上の支払いが発生するとおもわれる。
文字起こしの自動化。こちらは技術的なことがらだが、年末から読み続けている「インタビュー」(木村俊介)には、テープ起こしについての、考えを留保すべきことがらが記されている。引用させていただく。
それで、少し前にちらっと触れたが、起こしをはじめてみると自分の欠点が聞こえてもくる。自分の短所が、聞き直してあらためて文章にするあいだに、はっきりわかってもしまう。時には、こんな恥ずかしいやりとりなんて、なかったことにしたいと思うほどだ。しかし、まずはこの恥ずかしさによって、取材者としての自分の未熟さがよくわかり、相槌の打ちかたや質問のまとめかたなどを修正できるということもある。(130ページ)
録音機を止めたり巻き戻したりして、よく聞きとれなかったところをつかむ。この、時間を何度も戻しながら、聞き直すという繰り返しのなかで、取材対象者の発言を取材者の心中で反芻させるというのは、いわば「声に侵蝕させられる時間」にもなるだろう。
この工程は、面倒で苦しくもあるが、その苦しさもおもしろいというか、もう、まったく受け身にならねばいけないところにこそ、インタビューの特色もある、というように捉えられるかもしれない。(同ページ)